平成30年度の税制改正要望について

税理士

当記事は、税理士トピックとして平成30年度の省庁等の税制改正要望について記載しています。今回は、数ある要望のうち、金融庁、法務省、経済産業省、東京商工会議所を取り上げています。

 

金融庁の税制改正要望

金融庁の要望によりますと、所得税法上の生命・介護医療・個人年金の各保険料控除の最高限度額を5万円に、保険料控除の合計適用限度額を15万円に拡充することを要望しております。

現行では、各保険料控除の最高限度額は4万円、合計適用額は12万円となっています。

少子化・高齢化の急速な進展などで、社会保障制度の見直しが進められていくなかで、国民が安心できる生活保障の水準を確保するために、公的保障とともに私的保障の重要性が高まっており、国民の自助努力を税制面から支援・促進する生命保険料控除制度を拡充する必要があるとしております。

より一層の自助努力が求められている一方で、生命保険の世帯加入率は長期的に低下傾向にあり、1997年の93.0%から2015年は83.1%へと低下し、世帯主が30 歳未満の若年層においては、加入率が同88.6%から66.3%へと急速かつ大幅に低下している模様です。

また、生命保険については、遺族保障として年間約3兆円の死亡保険金が支払われ、公的保障を補完しておりますが、国民が加入している死亡保険金額は、望ましいと考える死亡保険金額に比べておよそ60%程度となっております。

そのため、金融庁は今後、若年層を中心に国民全体の私的保障の準備不足が懸念されるところ、国民の自助努力を税制面から支援・促進する生命保険料控除制度を拡充していく措置が必要との考えを示しております。
平成27年の生命保険料控除適用者数は、民間給与所得者数4348万人のうち3,123万人が、制度拡充後は3,290万人に、申告所得者数633万人のうち502万人が、制度拡充後は529万人をそれぞれ見込んでおり、両者を合計しますと、2017年の3,625万人から3,819万人に増えるとみております。

 

参照元:

金融庁公式サイト「金融庁の平成30年度税制改正要望について」(PDFファイルあり)

 

法務省の平成30年度税制改正要望

所有者不明の土地が問題視されており、相続登記が未了となっている要因の一つとして、相続登記に係る費用の負担が指摘されています。これを受けて、法務省では、相続登記促進のため、登録免許税を免除する特例措置の創設を要望しております。

法務省では、2017年6月までの不動産登記簿における相続登記未了土地調査を実施しました。
約10万筆の土地について所有権の登記が受け付けられた年月日を確認し、現在に至るまでの経過年数を調査したところ、最後に所有権の登記がされてから50年以上経過しているものが、大都市においては6.6%、中小都市・中山間地域においては26.6%とされていました。

同様に、民間有識者による所有者不明土地問題研究会の所有者不明土地割合の全国推計結果によりますと、所有者不明土地が全国の20.3%を占め、なのと面積にして九州よりも広い、約410万ヘクタールにのぼるといいます。
相続登記は義務ではなく、登録免許税等もかかるため、相続時後回しにされ、そのまま長期間放置されて所有者不明土地問題の要因の一つとなっております。

所有者不明土地への対応は、公共事業用地の取得、農地の集約化、森林の適正な管理など、多くの自治体が直面する課題となっており、所有者不明土地があることで、市町村において事業の中止・中断や対象用地の変更を迫られるなど、土地の利活用の妨げになっております。
そのため、相続登記が未了のまま放置されている土地又は放置されるおそれのある土地については、登録免許税を免除することにより、所有者不明の土地問題に対応するとしております。

 

参照元:

財務省公式サイト「平成30年度税制改正要望(法務省)」(PDFファイルあり)

 

 

経済産業省

経済産業省の改正要望によると、中小企業の事業承継・再編の促進のため中小企業のM&A(親族外承継)への優遇措置の創設などを盛り込んでおり、以下の5項目です。

  1. 第4次産業革命に対応した「攻めの経営・投資」の強化
  2. 中小企業の生産性向上・地域経済の活性化
  3. エネルギーの安定供給
  4. 車体課税の抜本見直し
  5. 申告納税手続きの環境整備

中小企業の生産性向上・地域経済活性化では、中小企業の事業承継・再編の促進のため、中小企業経営者の次世代経営者への引継ぎを支援する税制措置の創設・拡充を盛り込んでおります。

具体的には、親族や従業員等に株式等を贈与・相続する場合や他企業や親族外経営者等に経営を引き継ぐ場合、ファンドを経由して事業承継を行う場合など経営を引き継ぐ際の形態に応じて、税負担の軽減措置を講ずることを求めております。また、中小企業・小規模事業者の再編・統合等に係る税負担の軽減措置の創設も要望しております。

同軽減措置の創設は、多くの中小企業・小規模事業者に影響を与えるものとして注目されており、近年、後継者不在のため事業承継が行えない、投資余力がないために事業継続をためらうといった課題を抱えるケースで、売却やM&Aにより経営資源や事業の再編・統合を図る手法が増えております。

こうした多様な手法に対してインセンティブを与えることにより、次世代への経営引継ぎを加速させることが必要不可欠として、株式、事業の譲渡益に係る税負担の軽減、不動産の移転及び地上権等の設定に係る登録免許税の軽減の創設、不動産の所有権移転に係る不動産取得税の軽減の創設、一定の要件を満たすファンドから出資を受けた際も中小企業関連の優遇税制の適用が可能とする要件緩和などを要望しております。

中小企業庁の委託調査によりますと、中規模法人の約3分の1が親族外承継を行っており、後継者不足の中小企業について外部人材等に対する事業承継を促進することも重要であるとの認識が強まっております。

 

参照元:

経済産業公式サイト「平成30年度経済産業省税制改正要望について」(PDFファイルあり)

 

 

東京商工会議所の税制改正要望

東京商工会議所の要望によると、中小企業の活力を最大限に引き出す税制の整備が必要とし、中小企業の価値ある事業を次世代に承継し、新たな挑戦を促す税制を実現するため、

  1. 諸外国並みの事業承継税制の確立
  2. 事業承継のために後継者へ自社株を生前贈与した場合は、大幅な評価減・軽減税率を適用
  3. M&Aを後押しするインセンティブ税制の創設
  4. 所得拡大促進税制の複雑な適用要件の緩和・拡充
  5. 中小企業の生産性向上に資する少額減価償却資産の取得価額の損金算入制度の拡充・本則化などを掲げております。

上記1では、先代経営者及び後継者における代表者要件・筆頭株主要件を撤廃し、経営に関与する取締役等が事業承継税制の適用対象になることの検討や、諸外国の事業承継税制を参考に承継(納税猶予開始)後5年経過時点で納税を免除、納税猶予の対象となる発行済議決権株式総数に係る上限(現行2/3)の撤廃、深刻な人手不足を踏まえた雇用要件のあり方の見直しなどを求めております。

上記2では、早期に後継者を育成し、計画的に経営資源を承継している企業では、円滑に事業承継が実現しているケースが多くみられるとした上で、団塊世代経営者の大量引退による「大事業承継時代」を乗り切るため、生前贈与に対するインセンティブの抜本的強化を図り、早期かつ計画的な事業承継を強力に促すことが重要との観点から、後継者に自社株を生前贈与する際、思い切った贈与税率の軽減又は株式評価減を講じるべきと主張しております。

上記3では、近年、中小企業のM&Aが活発化しておりますが、依然として、M&Aは、経営者において、会社の売却という手段自体が初めから選択肢にない場合が多い一方、買い手側にとっても、買収に伴うリスクの見極めが難しく、M&Aに踏み切れないことも少なくないと指摘しております。このため、売り手、買い手双方にM&Aのインセンティブとして、株式譲渡益に係る特別控除の特例の創設等、中小企業の価値ある事業の継続を後押しすべきと主張しております。

今後の税制改正についてさらなる議論がなされることを期待します。