税理士が解説する仮想通貨の税金基礎

税金

仮想通貨元年と言われた2017年。この年のビットコインの相場を振り返ると、1年間で約20倍に跳ね上がり「億り人」という言葉がある通り、仮想通貨で多額の利益を出した方も多いかと思います。利益を出した人が共通して抱えるお悩みに、税金があります。当記事では、仮想通貨の税金について、はじめて確定申告をされる方を対象に簡潔に説明したいと思います。

 

確定申告とは

税理士

はじめに、皆さん、確定申告についてどの程度ご存知でしょうか。この記事をご覧いただいている方の中にはサラリーマンや主婦の方なども多数いらっしゃるかと思いますが、これまで確定申告にあまり馴染みのない方も多いかもしれません。

簡単に言うと、確定申告とは、前年の一年間に発生した全ての所得の金額とそれに対する所得税等の額を計算し、申告期限までに確定申告書を提出してすでに納めた税金などとの過不足を精算する手続を言います。

通常、お勤め先の年末調整で納税手続きを完結し、確定申告までしたことのない方も、平成29年中に仮想通貨の売却などで利益を得ていた場合には、確定申告の必要が出てきますので注意が必要です。

 

確定申告の時期

例年、確定申告の期間は2月16日から3月15日となっています。(土日等に重なる場合は変わります。)

具体的な手続きとしては、昨年の所得の金額、つまりどの程度儲けて利益をだしたかを計算して、上記期間内に、確定申告書を所轄の税務署に提出、そして納めるべき税金がある場合には納税する必要があります。

仮想通貨の取引のある方は、まずは前年の仮想通貨の取引利益等を収集してどの程度の利益が出たかを把握してみてはいかがでしょうか?

 

所得の種類

所得税法上、確定申告で申告すべき所得がこちらになります。

所得税では、所得を10種類に分類して申告します。このうち、代表的な例が、給与所得、不動産所得といったものになります。サラリーマンなどの給与所得者の方が受け取る会社からのお給料については給与所得に分類されます。また、賃貸マンション・アパートなどの不動産経営をされている不動産オーナーの方の賃貸経営の収入は不動産所得に分類されます。その他、配当所得、事業所得、譲渡所得などのそれぞれの特性に応じて分類されます。

この所得区分ごとに、その所得の性質に応じて所得計算を行います。給与所得であれば、給与所得控除があったり、不動産所得であれば、赤字分を他の所得と相殺することができたりします。

所得税

では、仮想通貨の利益はどこに分類されるかと言うと、2017年9月に国税庁は、仮想通貨による利益は原則として雑所得に区分されるという見解を公表しています。

もちろん、ここで原則と言っているので、事業所得などその他の所得に分類される例外ケースもあります。ただ、サラリーマン投資家など本業の片手間、副業で仮想通貨投資を行っていた多くの方の場合には、雑所得に分類される方が多いと考えられます。(詳しくは、「仮想通貨の確定申告(中巻)」)

こちらをお読みになられている方で、すでに株式売買やFX投資などをされている方も多いかもしれません。株式売買の場合、証券会社の特定口座利用などの一定の条件を満たせば、確定申告まで必要ないケースもあります。一方、ビットコインなどの仮想通貨の利益(所得)については、株式売買やFX取引に適用されている上記税制は適用されませんので注意してください。

 

所得税の税率

詳細は割愛しますが、上記の10種類の所得について各所得毎に各種計算を行うとともに、総合課税と呼ばれる所得については他の所得と合算、また各種の所得控除を考慮して、課税所得金額を導きだします。所得控除には、扶養控除、生命保険料控除、寄付金控除など14種類があります。

そして、最終的には、課税所得金額にこのような「所得税の税率」を適用して所得税の金額を出します。見てお分かりのとおり、税率が所得に応じて上がっているのが見て取れるかと思います。これが累進課税と呼ばれ、仮想通貨の利益がある場合にはこの累進課税が大きく影響を受けます。

株式やFXの場合には、租税特別措置法によって税率が所得税15%、住民税5%の計20%と一定税率であるのに対して、ビットコインなどの仮想通貨の利益は、最大所得税45%、住民税10%の計55%が課される可能性があります。仮想通貨取引がある場合には、納税額が膨らみやすい点は税理士として注意しておきたい点でもあります。

 

仮想通貨

ケーススタディ:仮想通貨の利益が2000万円の場合

例えば、一般の会社員の方で仮想通貨の利益が2000万円あった場合を考えてみましょう。給与所得が600万円であった場合には合計して2600万円の所得となります、ここから所得控除など300万円があった場合、課税所得金額は2300万円となります。これを上記の税率表に当てはめると、約640万円と算定されます。すでにお勤め先で源泉所得税がある場合にはこの金額から差し引くことになります。また、所得税とは別に住民税10%なども課税されます。

 

給与所得者の方の場合

サラリーマンの方など給与所得者のケースを例として、もう少し深掘りしていきたいと思います。

給与所得者の場合で確定申告が必要になるのはこのようなケースに当てはまる場合です。勤務先が1箇所の一般的な会社員の方の場合には、仮想通貨の売却益などが20万円を超える場合は、確定申告が必要となります。

給与

 

では、仮想通貨の利益(所得)について、どのように計算していくべきかを次回「仮想通貨の税金<確定申告特集>(中巻)」で説明していきたいと思います。