社会福祉法人の事業内容とは
社会福祉法人の「社会福祉事業」には、第1種社会福祉事業(特別養護老人ホーム、児童養護施設、障害者支援施設、救護施設など)と、第2種社会福祉事業(保育所、訪問介護、デイサービス、ショートステイなど)があります。
こちらが、いわゆる、社会福祉法人の主たる事業です。
社会福祉法人は、この他にも「公益事業」と「収益事業」を行うことができます。
「公益事業」は、子育て支援事業、入浴・排泄・食事等の支援事業、介護予防事業、人材育成事業などが該当します。
また、「収益事業」は、貸しビル、駐車場、施設内での売店経営などで、収入は社会福祉事業や公益事業の運営に充てられたりします。
社会福祉法人設立は難しい
社会福祉法人は株式会社の設立などの一般企業と違い、福岡県庁などの所轄庁から認可を受けないと設立自体ができません。
自己の利益ではなく、公益となることを目的とした福祉事業を行うためには、経営者や事業基盤等に信頼がおけることを確認する必要があるからです。
まず、設立時に必要な人員の多さがあげられます。理事が6人以上、監事が2人以上、さらに7人以上の評議員(法人運営を監督するための評議員会の構成員)を確保しなければなりません。
しかも、理事、評議員や監事等には、選任にあたっての一定の要件が課されているため、よりハードルが高くなります。
また、施設を構えるのであれば、原則として必要な土地建物の所有権を有しているか、自治体等からの貸与が必要です。
税は優遇されている
通常、法人の所得には、「法人税」が課税されます。
しかし、社会福祉法人の場合、法人税法上の収益事業に該当する場合に法人税の課税対象になります。
そして、法人税法上の収益事業に該当するかしないかの見極めには、後述するように注意が必要です。
なお、社会福祉法人は、公益法人等のうち税制優遇を受けられる法人に該当するため、課税された場合の税率も、一般の企業より優遇されています(収益事業から生じた所得の19%、年800万円以下の金額については15%)。
また、社会福祉法人が作成する「金銭の受取書」(領収書)について、「印紙税」がかかりません。不動産を取得したり、保有したりする場合も税金の優遇が受けられます。
社会福祉法人が事業の用に供している固定資産については、原則として「固定資産税」の非課税対象となります。
課税される「収益事業」とは?
説明したように、社会福祉法人は、その「収益事業」のみに法人税が課税されます。
ここで気をつけたいのが、さきほど説明した「社会福祉法上の収益事業」と、「法人税法上の収益事業」はイコールではない、ということです。
つまり、前者の収益事業(貸しビルや駐車場など)をやっていないから法人税は非課税、と思い込んでいると、「申告漏れ」を指摘される可能性があるのです。
では、法人税法上の収益事業とは具体的にどのようなものを指すのでしょうか?
社会福祉法人は、法人税法上の「公益法人等」に該当し、法人税法施行令に規定する物品販売業、金銭貸付業、運送業、請負業など34業種の収益事業を行う場合に限り法人税の納税義務が生じます。
要件を満たした場合、社会福祉法人であっても法人税の課税対象になるわけで、例えば「社会福祉法上の公益事業」である有料老人ホームを運営して得た所得であっても、税金がかかることがある点に注意が必要です。
しかしながら、法人の行っている事業が「法人税法上の収益事業」に該当するかどうか、微妙なケースも、実際にはあるのです。
収益事業とならないケースは?
さらに言うと、「法人税法上の収益事業」に該当しても課税されない場合もあります。
駐車場業は、さきほどの34業種の事業に当たるのですが、社会福祉法人が医療保険業の付随行為として行う場合は、収益事業に該当しないことがあります。
また、国や福岡県などの地方公共団体から事務処理の委託を受けた場合には、同じく請負業に該当する可能性があります。
この場合委託の対価が事務処理のために必要な費用を超えない実費弁償によるもので、あらかじめ所轄税務署長の確認を受けた場合など一定の要件を満たした場合には収益事業となりません。
さらに、身体障害者・生活保護者・寡婦・高齢者(65歳以上)等が、その事業に従事する者の総数の半数以上を占め、かつ、その事業がこれらの者の生活の保護に寄与している事業についても、収益事業とならない可能性があります。
社会福祉法人の事業については、このほか、収益事業に属する資産のうちから非収益事業のために支出した金額については、非収益事業に対する寄附金とみなし、一定の限度額まで損金に算入できる優遇制度(「みなし寄付金制度」)が設けられています。
「みなし寄付金制度」とは、収益事業から非収益事業という法人内の資金移動を「寄付」とみなして税を優遇するもので、公益法人等に認められています。
ただし、「寄付」には限度額が設けられており、社会福祉法人の場合は、
- 法人税申告書別表四「仮計」の金額+支出寄附金の額 × 50/100
- 年200万円
のどちらか大きい金額まで、損金とすることができます。
「みなし寄付金制度」を利用する場合には、収益事業から非収益事業に、実際に資金を移動させる必要があります。
「収益事業以外の事業から収益事業へその金銭等の額に見合う金額に相当する元入れがあったものとして経理するなど実質的に収益事業から収益事業以外の事業への金銭等の支出がなかったと認められるとき」には、適用されませんから、注意しましょう(法人税法基本通達15-2-4)。
参考
一般社団法人・一般財団法人と法人税(国税庁)